「シミュレーションの結果は,やり方によって変わる」 ゼロ円から始める設計者CAE

「ゼロ円から始める設計者CAE」セミナーに参加しましたので報告します。
無料ツールを使って,強度シミュレーション(有限要素法)のコツを5時間で習得するセミナーです。

主催は株式会社図研(CADベンダ・Solidworksも)の100%子会社であるCADLAB(サポート会社)。本セミナー監修の栗崎彰氏(同社取締役)の著書「図解 設計技術者のための有限要素法はじめの一歩」は非常に評価高いです(Amazonレビュー 2013/12/13時点で全員が5つ星★★★★★評価)。当日担当の講師は栗崎氏の部下,古田講師でした。

看板にいつわり無し

受講する側としては無料ってところが重要です。効果がわからない段階で予算を取るのは難しいからです。

だから結局有料ツールが出てきたりしたら意味ないわけですが,ほんとに全部無料で完結しました。じゃあ主催の図研社はなんのためにやっているのか?というのは後述するとして,とにかく看板にいつわり無しです。内容もわかりやすくて,おおよそどんな未経験者でも自分の手で結果を出すところまで連れて行ってくれます。

その裏返しとして,内容は固定化されていて活発な議論はありません。質問タイムもありませんでした。予定外の内容を排除することで,予定の内容を確実に伝えることに重点を置かれているようです。その内容はweb上で読める栗崎彰氏の連載記事(※1)と同じで,それ以上の内容は期待できないので,記事を読んでわかる方は読んだほうが早いと思います。

結局,最後にたどりつくところは,「シミュレーションの結果は,やり方によって変わる」ということだと思います。シミュレーションの奥の深さがちょっと見えたところでおしまい。その先に足を踏み入れたいと思うか,しり込みするかは,人によって意見が別れるところだと思います。でもシミュレーションをやっていくなら,踏み入れるしかない,と思います。

開催はボランティアに近い

主催のCADLAB社は「解析工房」という有料セミナーを開催しているそうです。「前に進むには,足を踏み入れるしかない」ところまで連れてきて,この有料セミナーへ誘導するのがひとつの目的だと思います。しかしどれくらい有料セミナーへ進むかは疑問です,お金はまだハードルが高い気がします。しかも有料セミナーといってもたいした利益にはならないんじゃないでしょうか。続けてもらいたいですが,今の段階ではボランティアに近いと思います。
ちなみに無料セミナー内に有料セミナーへの勧誘はなく,紹介がちょっとあるだけでした。

お金をかけるなら知識に

さて今後CAEはどうなっていくのでしょうか。
ツールが簡単になって無知なユーザーが増え,今は危険な状態だとします。今後はその危険に気づいた無知なユーザーがみんな勉強して知識をつけ,知識のあるユーザーが増えていくのでしょうか。残念ながら私はそうはならないと思います。間違った結果を出してしまった無知なユーザーのほとんどは,無知なままで正しい結果の出るもっと簡単なツールを求めるだけです。今回のセミナーの中でも「『線形解析では合わない。非線形解析が必要』と相談に来る方でも,実は線形解析を十分使いこなせていないだけで,線形解析で対応できる場合がある」という話がありました。無知なユーザーはツールのせいにして新しいツールを追い求め,次々コストをかけることになるんだと思います。逆に,弘法筆を選ばずと言いますが,その域まで達すると,お金をかけなくてもそれなりになんとかできるんだと思います。無知は金がいるんです。

なので私はツールに頼りすぎず,いつでももっと深い知識を求めたいと思います。もしお金をかけるならツールよりもまず先に知識のほうにお金をかけたいです。そういう意味でCADLAB社のこのような取り組みはずっと続いてほしいですし,他のセミナーも増えていってほしいです。でも今はボランティア状態であろうと予想されるのが心配です。ボランティアでは継続できないので,継続可能な収益を上げられることを祈るばかりです。でもなかなか,難しいんじゃないかな…

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※1
「仕事にちゃんと役立つ材料力学」
「設計者CAEを始める前にシッカリ学ぶ有限要素法」

【参加記録】
2013年12月13日
大阪会場(図研大阪オフィス)
参加者 5名